
© 2025 Misaki Oguro

© 2025 Nazuna Saitou
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JPG's FAVE #4 大黒実紗希 × 齋藤菜沙奈
『 むすびめをほどく 』
2025年7月29日(火) ~ 2025年8月10日(日) ※12:00-18:00(日曜17:00迄) 月曜休廊
Jam Photo Galleryが注目の新進写真家をピックアップする JPG’s FAVE。第4回目となる今回は日本大学芸術学部写真学科でGOTO AKIゼミに所属する大黒実紗希と齋藤菜沙奈による展示を行います。旅の中で見出された感覚や記憶に耳を澄ますという点で、大黒と斎藤には「身体を通して世界とつながる」ことへの共通したまなざしが見られます。
GOTO AKI コメント
大黒は、都市で抱えていた孤独の奥にある「声にならない感情」を抱えながら沖縄を旅し、人々のやさしさや土地の光に触れたとき、自身の心が静かにほどけていく体験を写真に刻んでいます。一方、斎藤は、幼少期の事故によって失われた記憶と身体の感覚を異国の旅の中で静かにたぐり寄せながら、風や匂い、揺らぎの中に「生きようとする身体の反応」を写し撮ろうとしました。身体の奥に眠る記憶や感情を出発点としつつ、それを風景や出会いの中に重ねていく二人の写真には、自己と世界のあいだにある目に見えない境界線をそっとなぞるような繊細さと誠実さが感じられます。心や身体の深層に宿る「記憶の感覚」を写し撮ろうとする斎藤と大黒の初の二人展。この機会にぜひご高覧ください。
大黒実紗希 おおぐろみさき
2002年静岡生まれ。日本大学芸術学部写真学科在学中。中学生のとき美術部に所属していたが、絵以外で自分の心を表現したいと思い始め、父から譲り受けたコンパクトデジタルカメラで写真を撮り始める。大学休学中に日本国内を旅行している中で、たまたま訪れた沖縄の風景や人々に心を奪われて以来、何度も通うようになる。普段はポートレートを撮影しているが、沖縄に行ったことをきっかけにスナップ写真も撮り始める。
『冬の砂浜』
踊ることが大好きだった。踊っていると頭は空っぽになって、音に合わせて勝手に身体が動く。爆音で鳴り響く音楽と、自分の荒い息だけが身体を纏う。自分の中で「踊る」と「生きる」という言葉が同じ意味になっていた。しかし10歳の頃、私は突然横から突き飛ばされ、鉄の扉の角に頭を打ちつけて気を失った。この事がきっかけで踊り続けることが難しくなり、ダンサーになるという夢を諦めることになった。人生は突然の出来事で、大きく変化するものだと思 い知った。当時のことはあまり覚えていない。嫌な記憶を消すために、子供の頃の記憶を全体的に消してしまった。それでも死 への意識は残り、後悔したくないという思いは私を旅へと連れ出した。(中略) 生きている実感は身体が感じた風や匂い、気配といった生命の跡によって引き起こされていた。私はこの感覚に反応して写真を撮る。音に合わせて勝手に動く身体のように、思考に至る前の身体が受け取った、感覚の反応としてシャッターを切った。
齋藤菜沙奈 さいとうなずな
2003年東京生まれ。日本大学芸術学部写真学科在学中。2024年イギリスのArt University Bournem-outhに短期留学後、3ヶ月間ヨーロッパを周遊。今までに26カ国を巡る。3歳から11歳まではダンスに熱中し、サポートダンサーとしてLIVE・MVなどに出演。その後は幼少期から行っていた絵に力を入れ、中学生で美術部に所属、そこで顧問の先生に借りたカメラをきっかけに写真を始める。毎日カメラを持ち歩き、日常のスナップを中心に撮影。展示やzineの制作などを行う。
『溶け合って、いつか陽だまりになる』
上京して数年、私はずっと一人で生きることの孤独を抱えていた。誰もいない家に帰る日々。外に出なかった日は、テレビに向かって笑った声が初めて発した声だと気づくこともあった。心のどこかに、ずっと埋まらないまま残って いた空白。そんな私の空白をそっと満たしてくれたのは、沖縄の光と人の思いやりだった。(中略) 島の人がきさくに声 をかけてくれた。気づけば会話が広がり、笑い声がテーブルの上を行き交わっていた。「沖縄の言葉で“イチャリバチョーデー” って知ってる?一度会えばみんな家族みたいなものって意味さ。今日ここで出会えたから君はもう他人じゃない んだ」思わず尋ねた。「また、ここに来てもいい?」「いつでも帰っておいで」その言葉に、自分の存在がすくい上げられた気がした。 沖縄では、都会で抱えていた張りつめた孤独がふっとゆるみ、静かにほどけていくのを感じた。(中略) ファインダーを のぞき、シャッターを切るたびに、私と世界はやわらかく結び直され、写真に映る風景は、そっと語りかけるように「ひとりではないよ」と寄り添ってくれる。

© 2025 Kaj Watanabe
Upcoming Exhibition
渡辺 カイ 写真展
『 ARCHETYPE\
River Series#1\
目黒川_Upstream|Meguro River_Upstream , Tokyo, 2023>2025 』
2025年8月12日(火) ~ 2025年8月17日(日) ※12:00-18:00(日曜17:00迄)
都市の「コピー&ペースト」と「アーキタイプ」:
スイスの分析心理学者カール・グスタフ・ユングは、人間の意識の下には無意識の領域があり、さらにその下には、文化や時代を超えて、万人が普遍的に共有している「集合的無意識」があるとした。そして、その「集合的無意識」には、ひとの心のテンプレートとも言うべき「アーキタイプ (元型)」が存在していると説いた。
私はこの概念に触れた時、都市にもこの「アーキタイプ (元型)」があるのではないかと考えた。なぜなら、「スクラップ&ビルド」という反復生産を繰り返しながら展開していく都市の姿を見るにつけ、それがなにか意識を持った生 き物の様に感じ、かつ何か大きな力が作用していると感じていたからだ。
例えば、ある建物が取り壊され更地となり、その場所にはまた別の何かが建てられるわけだが、それは「いつか何処かで見たもの」ではないだろうか。 また、高いところから街を見渡してみれば、眼前に広がる場景はすべて「いつか何処かで見たもの」で埋め尽くされていることに気づかされる。 つまり「スクラップ&ビルド」とは「コピー&ペースト」とも見ることができ、それらの中に潜む同一性こそが「アーキタイプ」なのではな いかと考えた。 私の制作のテーマは、こうした都市の「集合的無意識」を力点として、作用点として具体化された都市におけるあらゆる構造物や、それ らの場景を類型的に写し取り、シリーズ化することで都市の奥底に潜む「ア―キタイプ」を探ることである。
渡辺 カイ|KAJ WATANABE わたなべかい
1970 宮城県に生まれる
1989 仙台電波工業高等専門学校 電子工学科 中退
1997 東京綜合写真専門学校 写真芸術第二学科 卒業
2020 写真家として活動を始める
個展
2021 “ARCHETYPE\Yamanote Line 30 Stations, 2020” _富士フイルムフォトサロン東京
2023 “ARCHETYPE\Metropolis Series#1,#2,#3,Tokyo,2009-2022” _フォトカノン戸越銀座店
https://pistaciachinensis.com/
ttps://www.instagram.com/pistaciachinensis/
革命前夜(プラハ1989) ・ 壁の崩壊(ベルリン19898) ・ ロイヤルウェディングの後(ロンドン1981) ・ 被災地の小学生(岩手2011)

© 2025 Herbie Yamaguchi
Upcoming Exhibition
ハービー・山口 写真展
『 Materials 〜日々変わりゆく世界に生きて〜 』
2025年9月9日(火) ~ 2025年9月21日(日) ※12:00-18:00(日曜17:00迄)
Jam Photo Galleryでは2度目となるハービー・山口の個展を開催いたします。ハービー・山口の写真と言えば、何気ない日常を切り取った温かなスナップショットを思い浮かべる方が多いでしょう。しかし実はロンドン時代から現在に至るまで、紛争、革命、災害、パンデミックといった状況に身を置く人々の姿も静かに見つめ続けてきました。
そこに写し出されるのは、ただの苦悩や悲しみではありません。被写体を一方的に写すのではなく、共にその時を生きているという他者との関わりを重視した眼差しは、どのような時代や場所であっても一貫しています。「人の心をポジティブにする写真」を撮るという信念の元、苦しみの中にも光を見出し、不安の中にも希望を写しています。
本展は、過去を振り返るためだけではなく、ハービー・山口の眼を借りながら未来への希望を再認識するための時間でもあるはずです。
ハービー・山口 はーびーやまぐち
1950年東京生まれ。大学卒業後の1973年にロンドンに渡り10年間を過ごす。ロンドンの最もエキサイティングだった時代を体験しながら撮影したミュージシャンのポートレイトやスナップショットが高く評価された。帰国後も国内のアーティストのCDジャケットを多数手がける。ライフワークでは「人の心をポジティブにする写真」「生きる希望」をテーマに市井の人々にカメラを向け続けている。随筆家、ラジオパーソナリティとしても活躍。著作に『女王陛下のロンドン』『日曜日の陽だまり』『人を幸せにする写真』など。2011年度日本写真協会賞作家賞受賞。2024年日本写真芸術専門学校校長に就任。
http://www.herbie-yamaguchi.com
https://www.instagram.com/herbieyamaguchi