
© 2026 Kiyoshi Niiyama
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新山清 写真展
『 樹々 』
2026年1月13日(火) ~ 2026年1月25日(日) ※12:00-18:00 月曜休廊(日曜17:00迄)
Jam Photo Galleryでは7度目となる新山清写真展です。『樹々』と題した本展は新山が残したプリントに数多く登場する樹木に焦点を当ています。ドイツのオットー・シュタイナートが提唱した主観主義写真(subjective photography)という写真表現で定評のある新山は、ジャンルに捉われず自然風景、街、人物、動物などあらゆる被写体を対象とし、造形美を意識した独特な視点で世界を切り取ってきましたが、特に自然風景が好きだったと言います。1969年に不慮の事故により57歳の若さで逝去した際、生前親交のあった濱谷浩、植田正治、緑川洋一などによって「木石の詩」と題した遺作展が開催され、併せて写真集も刊行されました。タイトルにも示されているように、新山は木や石を好んで撮影していたことがわかります。
2023年イギリスで刊行された"Through the Lens : Inspiring Quotes from Master Photographers"(マスターフォトグラファーたちによる感動的な名言集)に、アーヴィング・ペンの隣のページに新山清の名言が掲載されています。
Familiar objects and scenes can be transformed into works of photographic art is very easily.
身近な物や風景を写真芸術作品に変えることは非常に簡単である。
この言葉を心に留め新山のプリントを眺めると、自分の審美眼を信じ好奇心を持って被写体にレンズを向けることで、たとえ平凡な1本の木であっても写真表現が可能であると私たちに教えてくれます。
本展では残されたプリントから、樹木が写っている写真をピックアップした後セレクトしました。すべて新山本人が暗室作業を行なったヴィンテージプリントによる展示となります。作品の中には、Getty Museum(Los Angels,USA)に収蔵された作品のアザーカットも含まれております。この機会に貴重なプリントを是非多くの方にご覧いただきたく存じます。
新山清 にいやまきよし
1911年愛媛県生まれ。主観主義写真作品を数多く残し、アマチュアリズムを貫いた写真家。戦前理化学研究所勤務、戦後ペンタックスサービスセンタ―所長を経て、アマチュア写真家の指導に尽力していた1969年凶刀に倒れ57歳という若さで逝去した。没後は長男・洋一氏によって国内外での写真展を数多く開催している。ドイツ・ベルリンのキッケンギャラリーの契約作家でもあり、Getty Museum(Los Angels,USA)、Smithonian Museum(Washington,USA)などに作品が収蔵されるなど海外での評価も高い。

© 2026 KUMAKURA Toru
Upcoming Exhibition
クマクラトオル 写真展
『 みんな星のかけらでできてゐる 』
2026年3月3日(火) ~ 2026年3月8日(日) ※12:00-18:00 (日曜17:00迄)
1801年イギリスの医師ヤング(Thomas Young, 1773-1829)が唱え、ドイツの生理学者ヘルムホルツ
(Hermann Ludwig Ferdinand von Helmholtz, 1821-1894)によって発展させた三色説が発表されました。眼には赤・緑・青に反応する三種類の受容体があり、それらの刺激の比率に応じてさまざまな色が認識されるというものです。1855年、イギリスの理論物理学者マクスウェル(James Clerk Maxwell, 1831-1879)は線形代数を用いてこの説を数学的に証明し、そして1861年にはガラス板上のモノクロ写真と三色のフィルターを用いてスクリーン上にカラー写真を映写する公開実験が行われています。カラーフィルムが出現する以前のカラー写真は、カメラレンズを通る光をシアン・マゼンタ・イエローの三色に分解させて別々のモノクロフィルムに露光することによって原版を得ていました。光を三色に分解する方法として、カメラ内部に装着されたハーフミラーやプリズムを使って三方向に分ける方法のほかに、レンズやフィルムの前面に赤・緑・青のフィルターを装着する方法があります。
本展の写真は、三色のレンズフィルターと大判モノクロフィルムによって撮られています。かつての三色分解による撮影は、専用のカメラによって三色を同時に露光させてその瞬間をとどめようと試みてきました。その試行錯誤は機材の発展の歴史からも読み取れます。しかし、大判カメラを使った撮影は、フィルターを装着してシャッターをチャージしてフィルムホルダーを装填して引き蓋を開けてシャッターを切るという動作を三回繰り返す必要があり、有無を言わせず時間の「ずれ」が生じます。いかに素早く動作しても一枚を撮るのに十秒弱、場合によっては数分数時間、あるいは日を跨ぐ「ずれ」まであります。そうして撮られた三枚のモノクロフィルムが重ねられて一枚の写真になったとき、ひとつの対象の放つ光が、時間の「ずれ」によって色彩となって現れたのです。三枚のモノクロフィルムの色彩は、デジタルに変換して画像処理ソフト上で重ねることによって再現されています。
紙へはインクジェットプリンターを使用して出力されています。一般的にインクジェットプリンターの色彩は、シアン・マゼンタ・イエローのインクを紙の上に塗布することによって表出されます。本展の写真の本性は、この通常のインクジェットプリンターのインクと、紫外線に反応して赤・緑・青に発色するインクを組み合わせて、ブラックライトを照射することによって出現します。撮影時に三色に分解された光の三原色が、紙の上で再び合成される奇妙な現象に出会えることでしょう。かつて使われていた技術を現代で提示するとき、現代の技術と混ざり合い複合体となって、さらに明滅を繰り返しながら研ぎ澄まされて、それらの点と線の延長のなかにいるということに驚嘆と感動をもって実感します。
クマクラトオル
1978年東京都生まれ。埼玉県育ち、神奈川県在住。日本大学生物資源科学部卒業。20歳の頃に写真を始め、独学で続けている。現在、写真撮影業。
個展 2024年11月 『みんな星のかけらでできてゐる』 Gallery & Darkroom LimeLight




