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オルト

鶴巻育子写真集

作家メッセージ

1 隣にいる人

2 ※写真はイメージです

3 見ることとは何か

インタビュー 大沢郁恵さん

インタビュー 末棟武虎さん

インタビュー 難波創太さん

プロフィール​

大沢郁恵さん
1981年生まれ。子どもの頃から見えづらく17歳のとき網膜色素変性症と診断される。ライブ関係の仕事に就く夢を諦め、映像制作会社に就職するも徐々に目の症状が悪化してきたため転職し、現在は盲導犬のルルと暮らしながら会社員として働いている。右目は手動弁、左目は視力0.02、視野は中心1度。


大沢さんとの撮影が終わった次の日、彼女からメッセージが送られてきた。

「撮影をリベンジするのは可能でしょうか?目の見えないお子さんにとって、自分の描いた絵は描き終わると消えてしまったも同然という話を聞いたことがあります。私にとっても、写真を撮るということは同じ部分があるのかもしれません。ただ、作品として残したいという思いがあれば、心の中に焼き付いて消えないのかなとも思いました。たぶん鶴巻さん達はきっと思い出を撮るとよりかは、より深い意識を持って写真を撮ってるんだろうなと想像しました。なので私も今度はもっとしっかりと『写真を撮る』ことをしたいと思いました。」


撮る時「こう写ってるはず!」って思いながら撮りました。
撮影地:代々木公園~明治神宮

(鶴巻)前回の鎌倉での撮影は満足いかなかったのですか?

(大沢)前回は何も考えてなくて、ただカメラを渡されて楽しいと思ってただ撮ったって感じで。お客さま感というか…

(鶴巻)受け身って感じはしなかったですよ。

(大沢)確かに楽しかったです。でも、それだけでいいのかなって。

(鶴巻)ただ、意識し過ぎたりうまく撮ろうとかすると、見えてる人でもうまく撮ることが目的になってしまってつまらない写真になることがあるんですよ。

(大沢)はい。ただどうやっても私はうまくは撮れない。うまいっていうよりかは、念…気持ちを乗せたかった。それが良いかわからないですけど、以前ぺんてるの企画で絵を描いたときもそうだったんです。描けているかわからなかったのですが、でも「何か、届けっ!」って思いを込めて描きました。

(鶴巻)今日のリベンジ撮影は撮影方法を変えたってことですか?

(大沢)前回足りなかったのは何だろうって振り返った時に、聞く、聞こえる、匂うはあったんですけど、それ以外にイメージする、思いとか念がなかった。鶴巻さんに教えてもらったり、ものに触ったりしながら頭の中に一旦イメージを描いて、例えば「ルル(盲導犬)、こっちみろ!」と祈りながら。全然変わらないかもしれないですけど、一応思いは込めてみました。

(鶴巻)確かにルルはカメラを向いていましたね! ところで1回目の撮影ではなかった気づきはありますか?

(大沢)今回気づいたのは、普段ただ歩いていても楽しんですけど、写真を撮る行動を一個挟むことによって出会うものとか出来事が印象的に残りやすいと思いました。

(鶴巻)私たちも写真撮ることでその時の状況が鮮明に記憶に残ったりします。スマホでも撮りますがあまり記憶に残らない。

(大沢)写真てただシャッター押しているだけじゃなくて、なんだか不思議な感覚が残るんですよね。それは見えてても見えなくても一緒なのかもしれない。それから前回も思いましたが、シャッター降りるまでの時間、あれが新鮮だった。「撮るよぉ…撮ったっ!」みたいな。この子(カメラ)が頑張ってくれた感じ。確かにスマホとは違いました。

(鶴巻)カメラが頑張ってくれたってかわいい表現ですね。それと、大沢さんも感じたように、私も写真て撮る行為自体に何かあると思っているんです。

(大沢)そうですね。指を動かしてシャッターを切ることで、脳の中の記憶もパシャってなるんでしょうね。

(鶴巻)そういえば、大沢さんは美術鑑賞するワークショップによく参加しているそうですけど、どのように楽しんでいるのですか?

(大沢)見える人の感想を聞くのが面白いんです。いろんな見方があって。人の目を通してみる楽しさを感じるようになりました。キースヘリングの絵をみんなで観た時、ある人は楽しそう、ある人は悲しそうって言うんです。それがすごい不思議で。色々聞いていくと、その人は今そういう気分だからそう見えるんだとか、ある人はそういう人生を過ごしてきたんだなって思ったり、それが垣間見える瞬間が面白かったんです。

(鶴巻)経験によって見えるものや見え方が変わるってことですよね。

(大沢)はい。しかも言葉にすることで、本人も自分はそう思っているんだって改めて気づく。それが楽しくて楽しくて。

(鶴巻)恥ずかしがらずストレートに思ったことを話し合うって新鮮ですね。展覧会や美術館は会話できないことが多いですが、今度の私の個展は喋っていい空間にしたいと思っています。視覚障害者の人も来てもらいたいから、そしたら誰かが説明する必要がありますし。

(大沢)音声ガイドはつけますか?

(鶴巻)それを聞きたかった。音声ガイドって視覚障害者の人にとってどうなのか。

(大沢)好きずきはありますね。音声ガイドのいいところは、時間が空いていてふらっと行きたい時に便利です。でも周りの人の意見を聞きながら見た方が楽しい。

(鶴巻)撮影の話に戻りますが、撮る前にイメージするって頭の中でフレーミングしてたってことですか?

(大沢)一応。鎌倉の時は全くでした。撮る時「こう写ってるはず!」って思いながら撮りました。

(鶴巻)まさに念写ですね!

(大沢)本当に!「なれ!」って思いながら!その念を込めたんですって。それが100人に1人くらいに伝われば嬉しい。絵を描いたとき、上手い下手は置いといて、見える人には描けない絵になったらと思って描きました。お世辞でも「新しい!いい感じの絵!」みたいに言われたら面白いでしょ。

私も質問していいですか?鶴巻さんは、写真撮る時今日ここ撮り行くぞとか何撮るぞとか、事前に考えていくんですか?

(鶴巻)撮影場所は事前に考える時と適当に決める時どちらもありますよ。なんとなく予感があって、この辺行くといいの撮れそうとか、勘で動いたりします。

(大沢)へー、予感!?

(鶴巻)知らない道歩いてみたり、あえて迷ってみることもあります。

(大沢)ほぉ!私も、今日は始め代々木公園でルルを撮ることしか考えてなかったんですけど、予想外のものがいっぱい撮れました。全然そういうつもりじゃなかったのに、写真撮ってるといろんな出会いや面白いことが起こるんだなって思いました!

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